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「行動ファイナンスを前提とした投資」を勧める理由 後編【損失回避】

リベラルアーツ360

参照点が変わると、気持ちも変わる

分かれ道

前回は、「行動ファイナンスを前提」に
なぜ投資を考える必要があるのか、
【保有効果】を使って解説しました。
(詳しくは、第7回目

今回は、その後編です。

まずは、前回の経済ゲームをもう一度振り返ってみましょう。

論理的思考のアンドロイド・エコンはどちらもだったのに、
ヒューマン・Mファ君は①は
②はを選びましたね。

①と②、どちらも答えは、

必ず、1万円の所持金。
50%の確率で、2万円か、0円

ことには変わりないのに、始めの所持金が①0円か、②2万円
その後の選択が大きく変わります

では、なぜ前提条件を変えたら、
ヒューマンMファ君は気持ちを変えたのでしょうか。

それは、
所持金の【参照基準点(参照点)】
①と②でちがっていたからなのです!

ノーベル賞の【プロスペクト理論】は、20世紀の大発見

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①は、
「0円」もともとお金がないのが参照点です。
そこから「利得」になる話です。

対する②は、
「2万円」お金が既にあるのが参照点です。
そこから「損失」になる話です。

 

実は、人間というのは、
得するより損した方が圧倒的に心のダメージが強く

1万円失った時には、

な、な、なんと…!

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2.5万円ももらわないと

心の埋め合わせができないことが、
実験で明らかとなっています。

この実験が、
行動経済学で一番初めにノーベル経済学賞を受賞した

Daniel Kahneman

ダニエル・カーネマンの【プロスペクト理論】なのです。

Kahneman (and Tversky) concluded that losses were 21/2 times
as undesirable as equivalent gains were desirable.
『A RANDOM WALK DOWN Wall Street』より
(ダニエル・カーネマンについては、第5回目を参照)

【損失回避】も、やっぱり古代人の最恐の呪いだった!

原始人

これこそが、人間に本来備わっている2つの心理傾向の

もう一つめ、

【損失回避】(出来る限り損を避けたい)

だったのです!

 

この【損失回避】こそ、
古代人から受け継いだDNAが持っている我らの
最も恐ろしい魔法です。

 

古代の狩猟民族の生活を振り返ると、
この【損失回避】が
いかに大事なのがよくわかります。

万一、狩った獲物を失った時に
「のほほ~ん。まあいいや。
何とかなるさ~」

と、ぼやぼやしていたら、
飢えて命を落としてしまします。

「大ショック!何とかして取り返さなきゃ!」

と、焦って火事場の馬鹿力を発揮しないと
生命の危機に及びます。

そう、「狩った獲物は絶対に失わない!」という気持ちは、
生命の存続に関わる
大事な大事な本能だったのでしょう。

「投資の本質」は行動ファイナンスにあり

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この【損失回避】や【保有効果】を、
投資をする前によーーーく認識しておくことは
とても大切です。

株などの投資商品を購入していると、

1万円利益が出ていたら、
(もしかしたらもっと上がるかもしれないのに)

すぐに売って、利益を得たい! (【利食い】)
という気持ちが強く、

1万円損していたら、
(もしかしたらもっと下がるかもしれないのに)

売って確実に損をする (【損切り】)
のを避けてしまうからです。

 

「○○とは一体何か」というディープラーニング
「○○について、自分なりに考える」
というアクティブラーニングが浸透している米国では、
投資と向き合う時には、どうあるべきかということに
まず注力している投資本がベストセラーになります。

しかし、残念なことに、
日本人の投資の本でこのことについて言及している本は
(山崎元さんや、岡村聡さんの著書などと、)とても少なく、
この考え方が普及していません。

なぜなら、日本では
「【損失回避】?そんなことは言われなくても分かるし、
単に気持ちの問題だろ。
それより、
さっさと投資のテクニックを教えてくれよ
という本が売れるからです。

日本の投資は、いえ、日本全体の傾向として、
テクニックノウハウ、テクノロジー
を利用したすごい技術を、伝授したり
習得したりする能力は、日本人はピカイチです。

 

しかし、明治維新以降、
日本人は欧米人の技術的な猿まねは出来ましたが、

管理人の加納さんもおっしゃっている

「物事の本質」

をまず前提として体得する、
という努力を怠っていました。

その傾向は、
いまだに日本の投資の世界にも表れています。

私は、
「投資の本質」は
「行動ファイナンス」に隠されている

と思っています。

 

最後に、話を最初のゲームに戻りましょう。

ヒューマンMファ君は、この【損失回避】があったために

一度手にした2万円を失わない唯一の方法である

「あえて危険な賭けに出て、
2万円を失うことを回避する」

道を選んだのです!

リスク

やっぱり、こわっ!
(私は高所恐怖症です。)

 

私も始め、この行動ファイナンスを学び、

自らが

「なんだかよくわからないうちに
ものすごい危険な賭けをしている」

状態になってしまう可能性があると
気づいたとき、とてもゾッとしました。

 

ですから、ぜひ、
皆さんにもまず行動ファイナンスを学んでほしい、
そういう思いで、このコラムを連載しています。

 

5回シリーズで連載しました「行動経済学と投資」、
いかがでしたか。

よかったら、あなたの感想お聞かせくださいね。

次回は、趣向をガラリと変えて、
大正時代の家計簿をのぞいてみたいと思います。

お楽しみに!

 

投稿者について

マネーリテラシーアドバイザー・薬剤師EMIKO
薬剤師。薬局・病院などを勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。2005年、中村芳子『20代の今、やっておくべきお金のこと』を読み、ファイナンシャルの世界に入門。2014年より米国ETFを中心とした海外投資で運用中。損得に一喜一憂しない「行動ファイナンスを前提としたインデックス海外投資」を提案する。趣味は古今東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の研究。新聞の文芸欄掲載多数。

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