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漱石の『それから』にみる高学歴エリートの経済的悲劇とは?

リベラルアーツ360

夏目漱石のそれからは、
『三四郎』『それから』『門』
という三部作の二作目の作品です。

明治42年、朝日新聞に新聞連載小説として執筆されました。

今回は、文学作品を経済的に読み解いてみましょう♪

登場人物の紹介です

『それから』相関図出典:朝日新聞デジタル

主人公は永井代助(30)。

東大卒のエリートですが、独身で定職に就かず、
当時の言葉で「高等遊牧民」
今でいう「ニート」です。

親は実業家の大変なお金持ちで、
兄にその事業は継いでもらっています。

彼は実家からのお金で暮らしているのですね。
独りで、
今でいう年収3000万円くらいの暮らしをしています。

 

代助の旧友が平岡常次郎(30)です。

同じく東大卒で、
銀行の行員として東京で働いていましたが、
三千代という女性と結婚したのち、
京阪支店に転勤になります。
(夫婦に子供はいません)

その間に何かあったんでしょう、
仕事に失敗して(つまり辞職して)帰京します。

東京に戻ると、新聞記者に転職します。

次に必要な貨幣&年齢換算

と、ちょっとここでストップ!

文学解説ではあんまりこのこと、
教えてくれないのですが、

文学作品では、
貨幣換算年齢換算
が必要です。

これをやらないと、作品を読み間違えることになりますので注意。

 

貨幣換算ですが、明治後期~大正作品は、

「×銭」⇒「×百円」
「○円」⇒「○万円」

に変換すると分かりやすいことから
私はこれを推奨しています。

(例)先日私が行った某老舗温泉旅館の大正6年当時の価格

入浴料4銭⇒400円
宿泊料35銭~1圓(円)50銭⇒3500円~1万5千円

 

年齢換算は、

明治~戦前までは人生50年を念頭に置きましょう。

ですから、
30歳の平岡の転職を若手の転職
と認識しない方が良いです。

今の感覚でいうと、40代後半くらいの転職だと思ってください。

平岡夫妻のツライ懐事情

 

さて、2015年の朝日新聞の解説によると、
平岡の新聞記者としての月給は推定20~30円

今でいう年収400万円世帯ですね。

 

さらに、平岡家は貯金ゼロ世帯です。
ゼロどころか、京阪時代に借金500円を作ってしまい、
代助に肩代わりしてもらいます。

この貯金ゼロの400万円世帯が、
家賃13~15万円くらいの都心マンション住まい
のような生活をしているわけですから、
どう考えてもお金が足りません。

 

平岡が代助の家に
車(人力車のこと。今のタクシー)で来た時も、

「宿へがま口(財布)を忘れたので、
ちょっと20銭(2千円と思ってください)貸してくれ」

と言いますし、

代助が三千代を観劇に誘うものの、
チケット代数円が払えず
これも代助が代わりに支払います。

 

東大卒の超エリート
(注)当時の東大卒は、今の東大卒と訳が違います)
年収400万円に落ちぶれたわけですから、
平岡の絶望は筆舌に尽くしがたいものがあります。

 

「三千代の眼(ま)の当たり、
苦しんでいるのは経済問題だった。
平岡が自力で給し得るだけの生活費を
勝手に回さないことは、
三千代の口吻(こうふん)で慥(たし)かであった。」

 

平岡が生活費を妻
(勝手⇒台所の意。ここでは奥さんの比喩表現)
に渡しておらず、経済的に非常に苦しいことが
三千代の話しぶりでわかった、
という意味ですね。

お金と人間模様が複雑に絡み合う『それから』

『それから』画像

出典:朝日新聞デジタル
(百合は本作での三千代のイメージフラワーです)

ここで白状するのですが、
実は代助と三千代は平岡と結婚する前まで相思相愛♡で、
しかもそうでありながら

代助は三千代を
平岡に嫁として斡旋(あっせん)します。

 

ええっ!?なんで!?

と思う読者も多いでしょう。
代助は、平岡が三千代に片思い♡していたのを知ってて、
彼女を譲ったのです。

文学作品の中には、
こういう
いい人ぶってプライドの高い主人公
が多く出てきます。

 

結婚前まで全く二人の相思相愛に気づかなかった平岡ですが、
上京してそれにうすうす気づき始めた平岡は、
貧困も相まって三千代との仲は完全に冷え切ります

作品が炎に包まれる、衝撃のラスト

『それから』映画

出典:朝日新聞デジタル 映画『それから』

それを知った代助は、名ゼリフである

「僕の存在にはあなたが必要だ。
どうしても必要だ。」

という、
トレンディドラマ俳優顔負けのプロポーズをします。

貧困と友情に裏切られた平岡は
ますますひねくれてしまいます。

「貧すれば鈍する」
を地でいくようなかたちです。

 

最後は、
平岡夫妻を翻弄した偽善者的主人公の代助にも天罰が訪れます。

 

どういう結末を迎えたのか気になる方は、
ぜひ『それから』本作を読んでみて下さいね。

【蛇足】2015年に朝日新聞に再び連載された『それから』
ですが、その際に、私の所感が当時掲載されました。
(朝日新聞2015年9月9日文芸欄)

【補足】

この『それから』を読んでみると、普段文学を読まない読者にとって、

「うーん…。文学的にどうとらえていいやら
サッパリわからん!」

状態になるかもしれません。

代助の自分勝手さや、平岡の情けなさに、

なんじゃいこいつら、イライラっ!

としなくもない作品だからです。

 

これは、古今東西の文学作品の
代表的モチーフ(題材)の一つである、

「好きになったヒロインを
他人に譲っておきながら、
やっぱり寝取る
エゴイズムヒーロー

なのです。例えばこれを

ラディゲは『肉体の悪魔』
で表現し、
三島由紀夫は『豊饒の海 春の雪』
で表現しています。

 

ちょうど、

「身分・立場の違うヒーロ&ヒロインが
運命に翻弄されながら愛し合う」

ロミオとジュリエットタイプの話が
古今東西の作品であるような感じです。

そのモチーフ(素材)を
作家がどう表現(調理)し、
作品(料理)にするかで、

作家の力量が問われるという訳ですね。

そう考えると、
この『それから』は料理として最高の出来栄えだと私は思います。

 

次回は、
新年度企画「新入学・新社会人におススメの初心者マネー本」です。

お楽しみに!

投稿者について

マネーリテラシーアドバイザー・薬剤師EMIKO
薬剤師。薬局・病院などを勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。2005年、中村芳子『20代の今、やっておくべきお金のこと』を読み、ファイナンシャルの世界に入門。2014年より米国ETFを中心とした海外投資で運用中。損得に一喜一憂しない「行動ファイナンスを前提としたインデックス海外投資」を提案する。趣味は古今東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の研究。新聞の文芸欄掲載多数。

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