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【第18回】貧困になって不幸なのは「お金がない」ことではない

リベラルアーツ

前回より、
シリーズで戦前の大富豪本多静六
に焦点を当てながら

お金とは?
ということについて考えています。

参考図書はこちら⇓

『私の財産告白』本多静六(著) 実業之日本社文庫

前回の第17回では、25歳の本多青年が
貧乏脱出の決意をしたところをお話しました。

 

ポジティブな姿勢!

これこそが、貧乏脱出の一番のカギであると
私は力説しました。

 

どうして私が強くそう思ったのか、
それは貧困に陥った時に、襲い掛かるあるワナが、
貧乏脱出を阻んでいるからだと、
本多は著書で述べているからです。

 

貧乏になった時、
「お金がない」こと以上
困難なこととは、一体なんでしょうか??

 

それは、「貧すれば鈍する」だった

 

本多は語ります。

 

貧すれば鈍するという。
これも事実である。
(この断定が、私は好きです)

人は貧乏してくると、
ただに自分自身が苦しいのみならず、

義理を欠き、人情を欠き、
したがってまたをかく。

俗にいう「三カク」となってくる。(中略)

貧すれば鈍するが、
鈍すればさらにまた貧する。
(負のスパイラルですね)」

 

そうです。

お金が無くなって、一番の不幸は、
お金そのものがなく日々の生活が
生きるか死ぬかの瀬戸際というだけでなく、

それ以上に、

今生きる、明日生きる、

それだけでもう目一杯
完全に思考停止となってしまうことにあります。

 

それが、いわゆる
「貧すれば鈍する」
なのです。

 貧すれば思考停止になる
これが一番怖いこと

パッシブ

この思考停止が起こってしまうと、
恐ろしいことに
全ての気力という気力が完全に失われ、
何をどうしたらよいか分からず

ただただ、
目の前のことをひたすら
やりこなすだけ
になってしまうのです。

 

ですから、本多が貧乏脱出の決意をしたことが
一番大事だった、と言われても、

 

「え~?そんなの、
決心するくらい、誰でもいつでも
できるっしょ!」

 

と思うかもしれませんが、

「貧乏を脱出したい!
その為には倹約をイヤイヤでなく
積極的にして打ち勝とう!」

という発想をすることが、貧すれば鈍すると

全く出てこなくなってしまうのです。

 

この状態、実は
行動経済学の用語にあります。

それが、【トンネリング】です。

 

【トンネリング】とは?

トンネル

【トンネリング】とは、
その名の通り
トンネルの中にいると視野が極端に狭くなるように、
広い視野での考え方が出来なくなる状態
を言います。

 

つまり、目先の欠乏に対処するだけで精一杯で、
欠乏以外のことに全く意識が向かわなくなってしまう
ということなのです。

 

この【トンネリング】という概念、
初めて知った時私は完全に目からウロコでした。

これを知ってからは、あらゆる世界が
違って見えるような感覚に陥りました。

それくらいの、どえらい衝撃でした。

 

【トンネリング】は私たちの日常で
とても身近に起こっていることであり、
読者であるあなたにも、

ぜひぜひ!!

知ってもらいたい用語です。

 

【トンネリング】は身近でたくさん起きている

 

ここで、私が

「これ、まさに【トンネリング】だ!」

と思った具体例を挙げていきましょう。

 

具体例その①「感謝の気持ちを感じる余裕がない」

(日経新聞2018.6.18より)

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精神科医で有名な大野裕さんの言葉です。

 

「ある人が、車いすの人を手助けした時、
車いすの人がお礼の言葉も言わず急いで行ってしまい、
複雑な気持ちになった。

それを聞いた
メンタルトラブルで辞職した人が
『感謝の言葉を口にしたいと考えても出来ない程、
余裕がなくなる時がある。
それどころか、こころの余裕が全くないと
感謝の気持ちを考えることすらできなくなる』(要約)」

 

と言い、筆者の大野先生は衝撃を受けます。

 

「私たちは、おもいやりに接した時には
感謝を言うよう教えられたし、それが当然と考えている。

しかし、
それがしたくてもその発想すら浮かばない程
こころの余裕のない人もいる。その人は、したくないのでなく
『出来ないのだ』(要約)」

 

これこそが、【トンネリング】です。

(精神科医である大野先生には、
ちゃんとこれが心理学用語でもある
トンネリングであると
認識してもらいたいですね・・・。)

 

具体例その②「死ぬくらいなら会社辞めればができないワケ」

(汐街コナ著 ゆうきゆう監修)

ビジネスパーソンであるあなたなら、
この話題書を知っているかもしれませんね。

 

端的に言うと、

「死ぬくらいなら会社辞めれば」が出来ない理由は、

・・・もうおわかりでしょう、

【トンネリング】です!

死ぬくらいなら辞めれば出典:公式Twitterより試し読みサイト「cakes」

本書では、ボロボロのぼろ雑巾のようになった
会社員の主人公が暗い崖っぷちをフラフラ歩き、

気が付いた時には、「辞める」という発想すら
浮かばない状態を描いています。

(精神科医であるゆうきゆう先生には
ちゃんとこれが【トンネリング】であると
(以下略))
↑(注)行動経済学の大竹教授はこれが
【トンネリング】だと指摘しています。

 

 

どうです?

今までなんとなくぼんやり思っていた
思考に名前が与えられて、

「なんだ、これって全部一緒のことだったんだ!」

と腹落ちしませんでしたか?

私はしました。
すごーく心の中で納得しました。

 

次回は、この【トンネリング】の具体例を
文学作品なども紹介しながら考えていきましょう!

(これぞ教養コラム!?(笑))

お楽しみに!

投稿者について

マネーリテラシーアドバイザー・薬剤師EMIKO
薬剤師。薬局・病院などを勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。2005年、中村芳子『20代の今、やっておくべきお金のこと』を読み、ファイナンシャルの世界に入門。2014年より米国ETFを中心とした海外投資で運用中。損得に一喜一憂しない「行動ファイナンスを前提としたインデックス海外投資」を提案する。趣味は古今東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の研究。新聞の文芸欄掲載多数。

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