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【第24回】最終回!あなたにもっと、伝えたかったこと

リベラルアーツ

一年間連載して参りましたマネーコラムも、
今回がいよいよ最終回です。

 

連載を通じて、行動ファイナンスなど、
新しい経済学の用語を知ることで、
今まであなたがぼんやり感じていた

「何とはないあれこれ」にちゃんと
「名前」

タグ

が付いていたことが、
連載でお分かりになって下さったかと思います。

 

また、投資に関わる心理的な要素の解説や、
導入への橋渡しもお手伝いしたつもりです。

お金持ち

 

私が個人的に趣味で研究している分野でもあります、
明治後半~大正の家計簿や大富豪のお話を、
貨幣換算して現代の私たちに照らし合わせながら
考えても来ましたね。

 

連載当初は、

「本当に1年間、ネタは尽きないか!?」

と不安だらけでしたが、どっこい、
お陰様でネタは尽きませんでしたね。

本当に、もっともっと、話したいことは尽きませんでした。

 

さて、そんな最終回に送る話は、皆さんの生活に密着した
経済学的用語です。

ぜひ、今回これを学んでお帰り下さい。
(セミナー風に(笑))

 

【サンクコスト】は、なかったことにするが経済学的に正解

水に沈む

【サンクコスト】。

この経済学用語、
あなたは、ご存知でしたか?

これは、
あなたが今後生きていくうえでとても大切になる用語です。

 

【サンクコストSunk Cost(埋没費用)】とは、

「ある金額を既に使ってしまって、
もう取り戻せないお金

のことをいいます。

サンクsunkは、沈むのシンクsinkの過去分詞形(~された)で、

「埋没された」≒「消えてなくなった」

という意味です。
(コスト、は費用のことですね。)

消えてなくなったお金・・・。

全然、ピンときませんね。
でも、具体例を挙げると、何のことか、すぐにわかります。

サンクコストの具体例あれこれ

Ⓐビュッフェの料金

ビュッフェ

あなたは、友人と3,000円のランチバイキング(ビュッフェ)に来ました。

もう何か月も前に、久しぶりの友人が予約してくれたランチ。
でも、なんだか今日はおなかの具合がよくありません。

それでも、3,000円分の元はとろうと、はりきって
山盛りに料理を盛りつけ、大量のご飯を平らげました。

すると…

「うっ…!」

(後は、想像にお任せします(笑))

この場合、「3,000円のビュッフェ代」が、
【サンクコスト】です。

 

Ⓑ靴ずれする高級靴

革靴

新入社員のあなたは、初ボーナスで思い切って、
3万円の革靴を購入しました。

学生時代、スニーカーしかはいておらず、
就活でも3000円の靴を履いていたあなたにとって、
これは大奮発。

ところが・・・

「い、痛い…」

靴ずれを起こしてしまい、足には大きな傷が。
それでも、3万円もしたのだからと、
あなたは足に傷ができながらも、履き続けます。

この場合、「3万円の靴」
【サンクコスト】です。

 

その他、スポーツジムの月額費用、
テーマパークの年間パスポート、
コンサートチケットの前売り券、
コストコの年会費…。

これら全て、【サンクコスト】です。

 

経済学的には、つまり、アンドロイド・エコンなら、
これら【サンクコスト】

「全て、なかったこと」

として考えます。

アンドロイド・エコン

「ダッテ モウハラッテシマッタ オカネハ
トリカエシガ ツキマセンカラネ」

そのため、おなかの調子のよくないときは、
その調子に合った分しか食べませんし、

合わない靴は、
例え3万円してても二度と履きません。

元を取るために、定期預金を解約してまで、
無理やり3度以上テーマパークに行くこともありません。

チケットをうっかり忘れたため、コンサート会場の
チケット売り場に同じ額の「1万円のチケット」が
売っているのにもかかわらず、
ずっと見たかったコンサートを諦めて
すごすごと家に帰ってしまうこともないのです。

 

しかし、ヒューマン・Mファ君は違います。

これら支払った金額は

「あれだけ払ったのだから、
元をとらないと…!」

という【メンタルアカウティング】(心の会計)
に縛られます。

そして、
払ってしまったお金が返ってくるわけでもないのに、
本当に自分のしたいことではないかもしれない行動
をとってしまします。

 

それはなぜかというと、支払った【サンクコスト】
が心の中の帳簿では「損失を計上している状態」
になっているからです。

 

そのため、痛い靴を
3万円分の回数だけ使うことによって、
その損失が「相殺」され、
心の中で3万円がマイナス計上される
ことなくいられるのです。

 

もちろん、【サンクコスト】にも、
メリットはあります。

「こんなに高い授業料を払ったのだから、
しっかり勉強しないと!」

というように。

 

しかし、多くの【サンクコスト】は、
過去に自分が支払ったコストに、
知らず知らずのうちに縛られてしまうのです。

【機会費用】でサンクコストを考える

分かれ道

では、どうすれば、この呪縛から抜け出せるのでしょうか?

 

【サンクコスト】の呪縛に陥りそうになった時、
考えてほしいのが【機会費用】です。

 

【機会費用】とは、

「もしかしたらあったかもしれない、
もう一人の自分の行動コスト」です。

 

NHKEテレの0655という番組(平日朝6時55分の5分番組)
の「♪今日の選択は~、私をどこへ連れていく♪」
と歌う又吉直樹さん出演の歌が、私はとても好きです。

曲の題名:『今日の選択』
試聴:http://hoick.jp/musicplayer/index.php?id=18673&disc=1&rank=9&f_mdb=1)

分かれ道

(この歌は、明らかに又吉さん司会の「オイコオミア」を意識してますね)

 

私たちはいつも何かを決断しています。
この歌のように、朝ご飯はパン?ごはん?
着ていく服は、普段着?オシャレ?
今日歩く道は?

「もし、あの時違う方を選んだら、今頃は
違う結果になっているかもしれない」

そんな風に軽やかに歌うこの歌。

 

これこそ、【機会費用opportunity cost】
を端的に表しています。

この【機会費用】の面白いところは、

「あなたが行動「しなかった方」のコスト」

という概念です。

 

今度は【機会費用】の具体例

 

例を挙げていきましょう

①薬剤師国家試験

自己啓発

あなたは他の楽しいことを全てやめて、
国家試験の勉強に励み、そして見事合格しました。

そして、薬剤師となったわけなのですが、
この場合の【機会費用】は、

「試験勉強をさぼって、不合格になり、
フリーターになってしまった自分の生涯賃金

です。
それと今の、頑張って薬剤師となった自分とを比べるのです。

 

②コンサートの前売り券

チケットを忘れたため、
目の前に1万円のチケット売り場があるにもかかわらず、

「もう払ってしまった
1万円のチケットがもったいなさすぎる!!」

と、思うあなた。

もう1万円払って、チケットを買う気になれません。

「だって、それじゃあ、2万円のチケットになるじゃん」

この時の【機会費用】は1万円です。

 

③テーマパーク

年間パスポートを買ったので、
定期預金を解約してまで無理やり3度以上出かけたあなた。

この時の【機会費用】は、

「定期預金」

もしくは

「定期預金を予定していた税金の支払いに使え、
生活に窮することの無かった」

費用です。

 

こうしてみると、「何かの決断」の裏には、
必ず「それとは別の何かをしなかった決断
陰陽のようについているのですね。

 

経済学的に合理的判断を下すアンドロイド・エコンは、
どちらかの選択をするとき、この
【機会費用】少ない方を選択します。

 

つまり、薬剤師として正社員で働くのと、
薬剤師として働かないフリーター生活を比較したとき、
【機会費用】少ないのは、
薬剤師として正社員で働く方です。

 

ちょっと???という感じですが、
【機会費用】が⇒もう一人のもし自分がフリーターだったら、
少ない⇒生涯賃金が少ない
ので、薬剤師として正社員を選ぶ方が、経済学的に合理的、
ということなのです。

ときめき片づけ法は、【サンクコスト】を上手く清算している!

洋服

ここで、話をもう一度
【サンクコスト】の嘆きに話を戻しましょう。

【サンクコスト】を無視しろ、
というのが経済学的に正解、という訳は、

【機会費用】大きいから無視しろ」

といっているのだと、私は考えます。

「ときめきの片づけ法」で知られる、
こんまりさんこと近藤麻理恵さん。

 

出典:オフィシャルブログより

こんまりさんは、非常にこの【サンクコスト】を
端的に捉えているなと私は思います。

 

こんまりさんは

「着なかった服は、残念なのではなく、
申し訳ないのでもなく、

「私にはこういうタイプの服がダメだったんだ」

と気づかせてくれたための服だったとぜひ、
感謝してお別れして下さい。
着なかった服でも、十分役には立っていたのです。」

と提案します。

 

そうです。
「着なかった服」は【サンクコスト】ではありますが、
それを無理やり着るより、
着なかった服を

「もう今度はこのタイプの服は買わないよ」

という勉強代として感謝する方が、

【メンタルアカウティング】(心の会計)上、
マイナス計上されずに、そして無駄な費用を遣わずに、
前に進むことが出来ます。

マネー教養コラム 連載の総まとめです。

愛

既に使ってしまった取り返しのつかない費用を
いつまでも嘆いて、無理やり更にお金を使って
取り戻そうという行動(取り戻せませんが)を起こしてみるよりも、

それはもう済んだことだ、と失敗を学び
次に生かすという未来志向で行こう、というのが
経済学が示す「幸せの道」です。

 

コンサートチケットの例でいくなら、
どうしても見たかったコンサートなら、
家に忘れてきた1万円チケットはなかったことにして、
もう一度1万円のチケットを買いなおせばよかったのです。

その方が、あなたは幸せだったでしょう。

 

経済学とは、このように、

「お金を通じて、皆が幸せになる方法を考える」

学問なのです。

 

あなたも、今後何かを決断する時、
お金に縛られているなと感じるとき、

この【サンクコスト】【機会費用】
【トンネリング】【地位財】など、

今までお伝えしてきた
行動ファイナンスの用語を思い出してみて下さい。

 

あなたの生活のあれこれに名前が付き、

「あ、ひょっとしてこの苦しさって
【トンネリング】?」

のようにふと立ち止まることが出来てくれたら、
私も冥利に尽きます。

 

1年間、ありがとうございました。

投稿者について

マネーリテラシーアドバイザー・薬剤師EMIKO
薬剤師。薬局・病院などを勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。2005年、中村芳子『20代の今、やっておくべきお金のこと』を読み、ファイナンシャルの世界に入門。2014年より米国ETFを中心とした海外投資で運用中。損得に一喜一憂しない「行動ファイナンスを前提としたインデックス海外投資」を提案する。趣味は古今東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の研究。新聞の文芸欄掲載多数。

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